こんにちは。イサです。
年明けに、年末年始にどこにも行かなかった代わりに、美術の修復を勉強していた時代の友人を訪ねて、京都にいって来ました。
僕は以前に日本絵画の勉強をしていたので、京都というと、観光よりも研究のイメージが強いのですが、今回も観光、のつもりが、美術寄りのルートになってしまいました・・・。
そんな、今回の京都旅行でたまたま重なったのが「本来の用途で見る」という機会です。
詳しいつもり、でした・・・
そんなに多い回数来ているわけではないものの、京都というと、最初に画材屋さんに行って、あとは古物店を巡るか、有名な寺を少し見て回って、何か食べるて帰る、というくらいのことしかしません。
しかし、今回はせっかく行くのだから、ちょっと普通では行かない、優先順位の低いところに行ってみよう、と思いました。
それは、日本の美術では最も有名な絵師の一人、琳派の元祖、俵屋宗達が書いた杉戸絵がある、「養源院」と、同じく、日本の美術史上でその名を残す、狩野派最大の天才、狩野永徳の襖絵を残す、「大徳寺」です。
養源院は三十三間堂の近くにある小さな寺院で、俵屋宗達の描いた、白い象の杉戸絵があることで有名です。ですが近くに三十三間堂、京都国立博物館、少し歩けば清水寺がある、ということもあって、観光客の優先順位は低く、美術を研究している人間にしても、貴重な絵があることは知っていても、あまり「訪れたことがある」という人の話は聞かない、そんなところです。
ですが行って見ると、色々な発見がありました。
天才たちの本来の意図
杉戸絵が有名だったのですが、奥には襖絵もあって、それらが、書かれた当時の部屋の環境で、普通に杉戸、襖、としてそのままの位置に収まっていました。要するに、俵屋宗達本人が、描いた時の当初の意図がそのまま残っている、ということになります。
普通は美術館で見るので、絵はそのまま絵であり、「ガラス越しに見上げるようにして見るもの」でしかありません。
しかし、その現場で見た時、杉戸は菩提所としての機能を果たす、舞台装置の役割を果たしていました。
まず、入り口に入ると、訪れた人を出迎えるようにして唐獅子が飛び跳ねている絵が迎えてくれるのですが、その杉戸を開けると、廊下の向こうの奥に、杉戸に描かれている白象が見えるようになっています。
これがどのような意味かというと、左の杉戸を開けると、左の杉戸の書かれている緑色の唐獅子が、右の杉戸の白の唐獅子の下に隠れる状態になります。すると、奥の杉戸2枚に書かれている2匹の白象と、手前の白い唐獅子、ということで、その空間が「白い霊獣」ばかりになる、という訳です。
しかも、その杉戸絵を挟む廊下の天井には、かつて重臣たちが自決した時のお城の廊下の床板がそのまま天井に貼られている「血天井」と呼ばれる場所になっていました。
見比べて見て改めてわかった
また、永徳の襖絵を大徳寺の中の「聚光院」という寺の中で、実際に書かれた当初の用途そのままに置かれた状態で見たのですが、それまでのお寺で見て来た襖絵と、どう見ても迫力が違う、ということが見て取ることができました。
他の襖絵が、山水画であれば、遠目で見たかのような小さな景色、動植物であれば小柄の可愛らしいものがちょこちょこと描いてある、という印象だとすると、狩野永徳の絵だけが、ど迫力で、画面いっぱいに、堂々と、時にうねるようにして書き殴られていたからです。
その、画面いっぱいに描く構図の取り方は、他の襖絵にはない、大胆な構図の取り方でした。
これぞ、古い美術書に「永徳の絵は奇々怪界な表現」というように例えられていた、まさに、評伝の通り、その永徳に間違いない!と確信を得させられるに十分なものでした。
ちなみに、永徳の父、松栄の襖絵もあったのですが、狩野家最大の凡才?と呼ばれた彼らしく、地味で無難な書きっぷりが逆に印象的で、それも確かに評伝通りの「下手さ」を感じ取れました、笑
なんども目にしていたのに気がつかなかった
そうして、いたく感動を覚えたわけですが、実は、それらの絵は、これまでに美術館や、それこそ図録では、何度も何度も見たことのあるものばかりでした。
今回こんな風に改めて感動を覚えられたのは、たくさんのお寺と襖絵、という状況が続く中、近いものを数多く目にすることで「違い」を敏感に感じ取ることができたことや、当時の使用の用途に限りなく近い状態で見たことで、「本来の良さ」に近いものが感じられたことが大きかったのだと思います。
ですが、ここまで条件が揃わないと、歴史的な作品ですら、「本来の良さ」が感じ取れないのですから、普段、宣伝などをして、その良さを感じてもらう、言い換えれば価値を感じてもらう、というのはほんとに、難しいものだなあ、と改めて思わされた次第です。
そんな、価値あるコンテンツの生み出し方や、価値を感じてもらう方法を学ぶ、ベストプラクティス!
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