【連載】第3回 ホリエモン『多動力』の大ヒットを生み出した編集力(話し手:箕輪厚介)

20万部超えの大ヒットを記録している『多動力』(堀江貴文著)をはじめ、『たった一人の熱狂』(見城徹著)、『新企画』(鈴木おさむ著)のなど数多くのヒット作を世に生み出した編集者・箕輪厚介氏。2017年7月に発売された『なぜ堀江貴文の本はすべてがベストセラーになるのか』(堀江貴文著)にも編集監修として参画している。本書の出版特別企画「ヒットメーカーに訊く!ベストセラーの作り方」と題して、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの箕輪氏に、ベストセラーを作る秘訣を訊いた。

第3回:ホリエモン『多動力』の大ヒットを生み出した編集力

末吉
箕輪さんにとって「編集」とはなんでしょうか?

箕輪
ストーリー作りだと思っています。届けたい読者をしっかりと意識して、その人に伝わりやすいストーリーを作ること。

末吉
受け取り手のことを考えるということですね。

箕輪
はい。読者を表紙から最後のページまで、しっかり導いていく。例えば、“はじめに”でこれから何を書いていくかを明示してガイドしても言いし、あえて例え話からしてもいい。読者が一番没入できる物語を作ることですね。するとか。

末吉
「多動力」ではどのように進めましたか?

箕輪
多動力ではタイトルを“多動力”に決めたあと、多動力というテーマの材料となりえる“堀江さんの情報”を取捨選択していきました。

末吉
“堀江さんの要素”を取捨選択するときのポイントは?

箕輪
多動力という料理に合う素材を選ぶことでしょうね。例えばすごく面白いエピソードがインタビューで取れても多動力と関係がなかったら基本的には捨てる。料理が不味くなるから。高級食材のフォアグラが手元にあっても、料理に合わなければ入れてはダメ。逆に、謎の雑草でも料理のアクセントになるのであれば入れるべきです。

末吉
使う要素を選んだあとはどうするのですか?

箕輪
素材選びのあとは、料理を提供する流れを組み立てます。前菜は何にしてメインはどれにして、デザートはなにでしめるか、みたいな。『多動力』でいえば、前菜に取り入れたのは“イーロン・マスクは次から次にやりたいことを思いついちゃうから服が着られない”という他動名エピソードです。これを読んで、「これ僕のことだ!」って思ってもらえれば、そのあとも読み進めたくなると思って。

末吉
では、そのの次には何を?

箕輪
「はじめに」で〝共感〟をしてもらって、第1章では、常識を覆しました。““具体的な仕事のノウハウ”はその先に置いて、そして最後章で、〝多動力〟というのは単なる仕事術の話じゃなくて、生き方の話なんだよと締めくくりました。こういう流れにすると、読者が気持ちいいと感じてくれるんです。読者が読みやすく、気持ちよさを感じられるように、一連のストーリーを作っていく。ある意味、映画に近いですよね。

末吉
ちなみに、本の中に必ず入れる要素はありますか?

箕輪
うーん、エグい話や聞いたこと無いエピソードなど、際の部分ですね。前にも話したけど、著者が言いたくないこと。本当は公開したくないことは入れます。ありきたりな話だけでは、読者は面白さを感じません。

末吉
なるほど! それは完全に、読者目線に立ってますね。

箕輪
さらに言うと、欠かせないと判断した要素は、編集者として力づくでも持ってこないといけない。調達や調理するのが大変な食材だったとしても、それをやらなくては意味がない。著者がパッと話したことをただそのまま書くだけなら、誰でもできる仕事だから。

末吉
そのためにはどうすれば良いのでしょうか?

箕輪
著者と信じられないくらい近い関係になるということかな。著者と編集者の関係ではなくなりますね。堀江さんとは堀江サロンの教授をやってるし、青木真也さんの「青木真也サロン」は僕が手伝って、イケダハヤトさんは、逆に僕の本を編集して出してくれてたり。見城徹さんなんてその際たるもので、僕は幻冬舎の社員になっちゃいました。仲良しになるって意味ではなくて、お互いに必要としあえる深い関係になるってことですね。

末吉
おぉ、なるほど、どれも深いつながり方ですね。

箕輪
異常なほどつながりが強くなれるのは、「そうですね」「なるほど」とか「それ面白いですね」っていう相槌を打つだけではなく、自滅覚悟で1回ガンガン食い込むからです。仲たがいをするかもしれないけど(笑)、それだけ深く入り込むことで、やっぱりあの人は信頼できるという切っても切れない関係を築けるんです。

末吉
なぁなぁではなく、本気で食い込むんですね。

箕輪
一般的に、作家ひとりにつき6社くらい担当編集がいるじゃないですか。当たり障りのない仕事をしていたら、その中のひとりになってしまうんです。でも、そこで決定的な信頼があれば、著者が「これは自信作だ」とか「いい内容を思いついた」っていうときに、「あっ、箕輪がいるじゃん」って真っ先に思い出してもらえると思うんですよ。

末吉
エグい仕事をしたからこそ、次がある。

箕輪
僕に対して「このヤロー!」って思ったとしても、いざ、決定的な本を作りたいってなれば「やっぱり箕輪にお願いしよう」って言ってくれる気がするんですよね。その他大勢の誰かではなくこの僕に。いろんな方から毎日のように本の企画のメッセが来るので、9割は味読スルーしてますが(笑)。

末吉
そういうところを突っ込んでいくから、本自体も熱のこもった面白いものになるんでしょうね。

箕輪
それは絶対にそうですね。僕はそうやってヒットを出してきたし、これからもどんどんエグい仕事をしていこうと思います。

【過去の記事を振り返る】
第1回 人の心をつかむ著者の条件
第2回 電子書籍で「売れる著者」になるための戦略

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【記事制作】
訊き手・編集:末吉宏臣
ライター:井上和子(https://twitter.com/minaminobambi
制作協力:戸田成美