受けた恩をまわす。

ぼくはよく、いろんな人のnoteのエッセイや小説、写真やイラストを覗いて回る。いつの頃からか習慣になっているようだ。もちろん、全部が全部精読するわけじゃあないけれど、結構な頻度で覗き回っている。

noteのなかではおもしろい出合いがある。それが理由だ。たとえばこのイラストは、noteで出合ったイラストレーターのますぶちみなこさんに描いてもらった。

(まだ会ったこともなかったぼくの、子どもの頃のイメージが絵になったそうで…。とっても不思議でおもしろい経験だったなぁ)

そしてまた今回、noteに書かれたエッセイにぼくの心と指を突き動かされた。そのエッセイを読んだ瞬間、Amazonを訪れて一切の迷いもなく、とある商品を注文した。それが、冒頭の写真にもある、これだ。

『ファイアズ(炎)』 レイモンド・カヴァー著

今日は朝から一日かけて書籍の編集について講座で、その準備もあったのだが、ついついページをめくる指が止まらなくてほとほと困った。

淡々とした文章でありながらスリリング。冒頭の「父の肖像」というカヴァーのお父様について書かれたエッセイは、自身の父親とのエピソードが一つまたひとつと丁寧に紹介されていく。感情に浸るでもなく、ぼくと全く関係もない一人の男のことが語られ続ける。普通に考えたら退屈しそうなものなのに、カヴァーのお父さんが目の前で息をするように動いている姿が勝手に想像されるのだ。

と同時に、じぶん自身の父親とのエピソードがぼんやりと頭の中に蘇ってくるから不思議なものである。深夜1時に読み終わってしばらくは、思考停止に陥ってなにも考えられない。誰もいない映画館で、父親との思い出が上映されている感じ。膨大なナニカを確かに感じているのだが、解釈ができず呆然となり、ただただ丸ごと飲み込むしかなかった。

続けて、「書くことについて」。エッセイや小説など、書くことに興味がある人には赤線を引く箇所がいたるところにあり、すぐに取り入れたくなる内容ばかり。ほんの一部を紹介しよう。

● 希望もなく絶望もなく、毎日ちょっとずつ書きます。

● 基本的な正確さを持って記述すること、それこそが文章を書くことにおける唯一のモラリティーである。

● ・・・やがて突然、すべての物事が彼の中で明確になった。

● トリックはなし。

でもこの記事が、誰かの何かの小さなきっかけにでもなって、その人への恩返しになればいいな。

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今日はまる一日中、編集力養成講座の講師をつとめていました。半年間にわたる長丁場が無事に終了して、一安心しています。じぶんのやっていることを人に伝えるのって難しいですね。こういうとき、本を書く著者の人の苦労を感じます。

DNAパブリッシングという電子書籍出版社にて、また新しいプロジェクトをスタート予定。おもしろいものになりそうなので、ぜひぜひお楽しみに〜!

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