抜け落ちる記憶の話である。深刻な病気ではない。
目覚めの眠気を覚ますために、冷凍庫をあけて氷をいくつかつかむ。変な形をしたグラスに落とすと、カランコロンといい音がする。南アルプスの天然水を注いで、机に座った。MacBookを片手で開きながら、グラスの水で喉を潤す。思惑どおり、キンと冷たくて頭がスッキリする。目をつぶって、すーっと息を吸い込み、ふぅ〜と吐いて準備完了。
さぁ、2日前にタイムスリップしよう。
2日前、ぼくは高田馬場にいた。編集長をつとめるDNAパブリッシングが主催する『DNA the Write』と名付けたブックライター養成講座の会場にいたのだ。
たくさんのことを経験し、たくさんの会話を交わし、たくさんのことを感じ、たくさんのことを思った。だから、そのことをここに書こうと思って、タイムスリップを試みたのだ。
「あれ? あれれ?」思ったよりも、タイムスリップがうまくいかないぞ。あのとき確かに、感動や熱がそこにはあった。あったはずなのに、記憶がうまく思い起こせない。おかしいなぁ。
もちろん、深刻な病気の話ではないから、記憶がすっぽりと抜け落ちているわけでもない。覚えていることだって、そりゃもちろんある。詳細な描写や些細な感覚が残っていない感じなのだ。
毎日のようにnoteに文章を書くようになって、思うことがある。
書くことは、体験すること、感じること、思うこと、考えることをピン留めすることだ。人生という真っ白なボードに、ピン留めをしていく。
ピン留めしていった先に、どんないいことが待っているか?
その答えらしきことをでっち上げることは、比較的簡単にできる。だけどそれはうそ(に近いこと)になるから、ここで書くのは控えようと思う。そんななかでも、これだけは言える。
書くことは、いいもんだ。(大変でもあるけどね)
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あー、『DNA the Write』のことについて書こうと思っていたのに、あらぬ方向へ筆が進んでしまいました。でも、ほんとうによい場だったし、集まったみなさんの可能性がたくさん見えたので、エッセイにまとめてお届けします。きっと。
(講師をつとめる樋口亜沙美さん)
そんなDNAパブリッシングのコアメンバーでリレー連載をしています。金曜日がぼくの担当です。(もう数日経過しとる)読んでみようかなと思われる方は、以下のタイトルをクリックしてくださいね。