ときには、自慢したっていいじゃない。

Skypeのグループ会話から、ぼくひとりだけ抜けた。そのあとも会話は続く。その会話とは、電子書籍の原稿づくりのインタビュー取材だ。

様々な業界の専門家たちが、職業人生をかけて培ってきた体験や知恵を引き出すインタビューの場は、まさに真剣勝負の場。なにを大切にしながら働いてきたのか、丁寧に聞き出していくのである。(往々にして、著者自身もことばにできていないから厄介だ)だからいまでも、取材のたびに緊張感が漂う。

DNAパブリッシングという電子書籍専門の出版社が2016年3月に立ち上がって以来、基本的には取材インタビューはぼくが対応してきたし、そうでなくても必ず同席し続けてきた。しかしはじめて、その場から離れた。正直、抜ける間際、iPhoneのボタンを押す瞬間の緊張はリアルに指先に残っている。

しかし同時に、安心感と妙な充実感も存在していることを発見した。その理由は簡単。後を任せた編集者とライターさんが頼もしかったからだ。抜ける直前にも、編集者さんに何かが降りたかのように、読者に刺さるコンセプトをしゃべり出した。著者さんも「それ、いけますね!」と前のめりで、興奮気味。

というように、もちろん彼女たちはプロ。場数も踏んできている。だから、大丈夫だということは頭ではわかっている。わかってはいるんだけれども、やっぱり、完全に手放す瞬間には、いろんなものが混じり合った複雑な感情が胸のなかにあったのだ。

Skypeが取材が終わったあと、その編集者からメッセージが入った。読んでいるだけで、とってもいい取材の時間になったことが伝わってきた。(充実感が滲んでいたのだ)

その編集者の名前は、樋口亜沙美さん。ブックライター兼編集者だ。共感能力がずば抜けて高く、その人になり切った執筆能力には舌をまく。ゆえに、たくさんの実力派著者さんからの信頼も厚い。彼女に任せておけば、まず間違いない、と。

なぜそんな彼女に任せられなかったのか? 末吉はチキンなのか? そんな疑問にも答えておこう。実は彼女、プロのライター歴は長いが、ブックライターと編集者歴はまだ1年ほど。さらに、彼女はDNAパブリッシング、そしてぼくのところでブックライター&編集者としての道を歩み始めた。

そして、その縁のつながり方がおもしろい! なんと彼女、ぼくのブログを見て突撃してきた。直感を受け、勇気を出して、個別メッセージをくれたのが仕事を一緒にはじめるきっかけだったのだ。ほんとうに最初の最初から見ているからこそ、なかなか手放せなかった。(のだと思う)

でも今日、彼女の堂々とした取材を聴いていると、ほとんど手出しする必要がなかった。それどころか、著者の魅力的なコンテンツを引き出し方、読者のかゆいところに手が届く徹底した読者視点、何より「これはいける!」という機運を生み出すパワーには驚いた。嬉しいやら、寂しいやら複雑だけど、これだけは言える。

樋口さんは、自慢の編集者だ。

これからの樋口さん自身の成長や、彼女が手がける作品がたのしみだ。

ときには、思いっきり自慢したっていいじゃない。意外と、仲間や身内を褒める文化って、日本にはあまりないから。

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DNAパブリッシングと樋口さんのコラボで、『DNA the Writer』というプロジェクトをやっています。ブックライターという仕事に光が当てられたらと思っています。ほんとうにいい仕事だと思うんだよなぁ。

そんな樋口さんの動画などが観れます。
→ http://dnapromo.net/writer/bookwriter/get/

【 過去の関連記事 】
◉ ブックライターという仕事:
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◉ 光よ、当たれ:
https://note.mu/sueyoshihiroomi/n/ndcf6094f60bf